交通事故の治療費打ち切りを打診されたら? 考え方と相談先の順番
先生、相手の保険会社の担当者から電話があって、「そろそろ治療費のお支払いを終了させていただきたい」と言われました。首の痛みはまだ少し残っているのに、通院をやめないといけないのでしょうか?
突然そう言われると戸惑いますよね。まず落ち着いてほしいのは、その電話は「保険会社からの支払いを終えたい」という打診であって、ユイさんの体の状態を決めるものではないという点です。痛みが残っているか、通院がまだ必要かを判断するのは医師です。今日は、打診を受けたときに何から考え、どこに相談すればいいかを順番に見ていきましょう。
保険会社と言い争いになるのは避けたいです。
言い争う必要はありません。ここで大切なのは、医師の意見を確かめること、保険会社の説明を正確に聞いておくこと、迷ったら公的な相談窓口を使うことの三つです。順番を決めておけば、落ち着いてやり取りしやすくなります。
「打ち切り」の打診は何を意味するのか
そもそも、なぜ相手の保険会社が病院の費用を払ってくれていたのですか?
国土交通省は、任意保険会社が加害者に代わって、自賠責保険 (車を持つ人が必ず入る保険) の分も含めて支払うことがあると説明しています。この扱いは一般に「一括対応」と呼ばれます。ユイさんが窓口で費用を払わずに通院できていたのは、相手の任意保険会社がこの一括対応をしていたからだと考えられます。
では、「打ち切り」というのは、その一括対応をやめるということですか?
そう理解してよいと思います。保険会社が、これ以上は自社から医療機関などへ直接支払うのを終えたい、と伝えてきている状態です。自賠責保険では、治療費は「必要かつ妥当な実費」が支払われるとされていて、保険会社は書類などをもとに、どこまでがそれに当たるかを考えています。ただ、保険会社は医師ではないので、症状がどうなっているかを判断する立場にはありません。
| 言葉 | 意味 | 判断するのは |
|---|---|---|
| 一括対応 | 相手の任意保険会社が、自賠責保険の分も含めて医療機関などへ支払う扱い | 相手の任意保険会社 |
| 打ち切りの打診 | 一括対応での支払いを、ある日付で終えたいという保険会社からの申し出 | 相手の任意保険会社 (申し出の段階) |
| 通院を続ける必要があるか | けがの状態や経過から見た医学的な必要性 | 医師 |
| 示談や賠償額 | 損害全体をどう賠償するかの話し合い | 当事者同士。迷ったら弁護士や公的な相談窓口へ |
打診を受けたら最初に医師へ相談する
電話を受けたあと、最初に何をすればいいでしょうか?
次の受診日に、通っている整形外科などの医療機関で医師の診察を受け、保険会社から支払い終了の打診があったことをそのまま伝えてください。そのうえで、今の症状をどう見ているか、今後も通院が必要か、必要ならどのくらいの間隔がよいかを聞いておきます。医師から「もう通院の必要はない」と言われることもありますし、「もう少し様子を見ましょう」と言われることもあります。症状や経過には個人差があるので、どちらになるかは人によって違います。
整骨院にも通っているのですが、そちらはどう考えればいいですか?
整骨院での施術を続けるかどうかも、医師の意見を聞いてから決めるのが順番です。自賠責保険の支払基準では、柔道整復師の施術費用は「必要かつ妥当な実費」とされていて、施術が必要かどうかは医師の意見が大きな手がかりになります。私たち柔道整復師が「まだ通ったほうがいい」と勧めて決めるものではありません。医師が通院の終了を考えているなら、整骨院の施術も一緒に区切りをつけるのが自然です。
医師に、痛みのことをうまく伝えられるか不安です。
メモを持っていくと話しやすくなります。痛む場所、どんな動きでつらいか、事故直後と比べて変わったこと、仕事や家事で困っていることを書いておきましょう。大げさに書く必要はなく、ありのままで十分です。整形外科と整骨院の役割の違いや、併用するときの順番は「交通事故で整骨院と整形外科を併用する正しい順番と注意点」でくわしく書いています。
| 医師に伝えること・聞くこと | 例 |
|---|---|
| 打診があった事実 | 相手の保険会社から、何月何日で支払いを終えたいと連絡があった |
| 今の症状 | 首を右に回すと痛む、長時間のデスクワークでつらくなる、など |
| 事故直後との違い | 楽になったこと、変わらないこと |
| 今後の見通し | 通院を続ける必要があるか、続けるならどのくらいの間隔か |
| 整骨院の施術 | 施術を続けることについての医師の意見 |
保険会社に確認しておくこと
保険会社の担当者には、何か言い返したほうがいいのでしょうか?
言い返すより、確認することを優先してください。いつの日付で支払いを終える予定なのか、その理由は何か、それ以降にかかった費用はどう扱われるのかを聞いておきます。医師の意見を聞いたうえで、その内容を担当者に伝え、今後の扱いを相談するという流れが落ち着いて進めやすいと思います。
電話だと、あとで「言った・言わない」にならないか心配です。
通話の日時、担当者の名前、話した内容をその日のうちにメモしておきましょう。大事な点は、書面やメールで送ってもらえないか頼んでみるのも一つの方法です。保険会社とのやり取りの基本は「交通事故で保険会社に連絡するとき何を伝える? 聞かれることの一覧」にまとめています。
| 確認すること | なぜ聞いておくか |
|---|---|
| 支払いを終える予定の日付 | その日以降に受診したときの費用の扱いが変わるため |
| 打診の理由 | 医師に相談するときや、相談窓口で説明するときに必要になるため |
| 終了日以降の費用の扱い | 自分で立て替えることになるのか、どう請求するのかを知るため |
| 今後届く書類 | 同意書や示談に関する書類がいつ、どんな形で届くのかを知るため |
| 担当者の名前と連絡先 | 後日の問い合わせ先をはっきりさせるため |
支払いが終わったあとの選択肢
医師から「まだ通院が必要」と言われて、それでも保険会社の支払いが終わったら、どうなるのですか?
費用をどう支払うかの選択肢が、いくつか考えられます。一つは健康保険を使う方法です。厚生労働省の通知では、自動車事故などの被害で生じたけがも、ふつうの病気やけがと同じように医療保険の給付の対象とされています。江戸川区の国民健康保険の案内でも、交通事故など他人の行為によるけがは、届け出をすれば国民健康保険を使って受診できると説明しています。会社の健康保険などに入っている場合も、加入先の窓口に手続きを確認してください。
届け出というのは、何をするのですか?
「第三者行為による傷病届」という書類などを、加入している健康保険の窓口に出す手続きです。江戸川区の案内では、受診する前に区の国民健康保険の担当窓口へ連絡するよう求めています。また、岡山市の国民健康保険の案内では、示談をすると国民健康保険が使えなくなる場合があるので、示談の前に連絡するよう呼びかけています。通勤中のけがで労災保険が使える場合は、健康保険は使えないとされています。ユイさんは通勤中の事故なので、勤務先にも労災保険の扱いを確認しておくと安心です。
ほかにも方法はありますか?
相手の自賠責保険に、被害者から直接請求する方法があります。国土交通省によると、被害者は総損害額が確定する前でも、医療機関へ費用を支払った都度、限度額の範囲内で何度でも自賠責保険金を請求することができるとされています。傷害による損害の限度額は被害者1人につき120万円で、被害者請求 (傷害) は事故発生の翌日から3年以内という期限があります。ただし、請求した費用が対象として認められるかは、けがの状態や医師の意見、書類の内容などで変わります。
| 選択肢 | 内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 通院を終える | 医師が通院の必要はないと判断した場合。その後の賠償の話は相手の保険会社と進める | 医師、相手の保険会社 |
| 健康保険を使って通院する | 第三者の行為によるけがとして届け出て、健康保険で受診する | 加入している健康保険の窓口 |
| 労災保険を使う | 通勤中や仕事中の事故の場合。この場合、健康保険は使えない | 勤務先、労働基準監督署 |
| 自賠責保険に被害者請求する | 立て替えた費用を、相手の自賠責保険に直接請求する。限度額や期限がある | 相手の自賠責保険の保険会社 |
| 自分の保険を確認する | 人身傷害補償保険など、契約によって使える補償がある場合がある | 自分の保険会社 (または代理店) |
健康保険を使っても、整骨院に通えますか?
整骨院での健康保険の扱いには細かな決まりがあり、けがの種類や状況によって変わります。まずは医師に施術を受けることについて相談し、健康保険の窓口や整骨院に、使えるかどうかを確認してください。自賠責保険で整骨院の施術が対象になる条件は、「交通事故で整骨院に自賠責は使える? 対象になる条件と流れ」でくわしく書いています。
誤解しやすいこと
打ち切られたら、それ以上は一切お金が出ないということでしょうか?
そう決まっているわけではありません。先ほどのように、健康保険や自賠責保険への被害者請求など、ほかの手段が考えられます。逆に、打診があったからといって、必ず通院をやめなければならないわけでもありません。どちらの場合も、医師の判断を軸に、条件を一つずつ確認していくことになります。
通院を長く続けたほうが、最後に受け取れる金額が多くなると聞いたことがあります。
その考え方で通院を決めるのはやめましょう。通院は症状に応じて必要な分だけにしてください。必要のない通院は、保険金の不正な請求と受け取られるおそれもあります。慰謝料の計算の仕組みは「交通事故の慰謝料は自賠責基準でどう計算する? 通院日数と期間の仕組み」で説明していますが、具体的な金額や示談のことは弁護士や交通事故相談センターに相談してください。
打診されたのは、私が何か悪いことをしたからでしょうか?
そう受け止める必要はありません。打診は保険会社側の支払いの判断で、ユイさんの通院の仕方を責めるものとは限りません。理由が分からなければ担当者に確認し、自分を責めずに、医師への相談から始めてください。
話し合いで迷ったときの相談先
医師の意見を伝えても保険会社と話がかみ合わないときは、誰に相談すればいいですか?
公的な相談窓口がいくつかあります。江戸川区では、交通事故に遭った人や起こした人のために、法律や判例に基づいた相談を受け付けています。日弁連交通事故相談センターでは弁護士が直接相談に応じていて、相手方と話し合いがつかないときには、センターの弁護士が間に入る示談あっせんも行っています。どこに相談するか迷ったら、まず身近な区の窓口に話を聞いてもらうのもよいと思います。
| 相談先 | 主な内容 | 利用の目安 |
|---|---|---|
| 江戸川区 交通事故相談 | 法律や判例に基づく交通事故の相談。面談は事前に電話予約。オンライン相談は区内在住・在勤・在学の人が対象 | まず全体の進め方を聞きたいとき |
| 日弁連交通事故相談センター | 弁護士による交通事故の相談。話し合いがつかないときの示談あっせん | 示談や賠償額について弁護士の意見を聞きたいとき |
| 交通事故紛争処理センター | 自動車事故の損害賠償の紛争解決を中立公正な立場で支援。事前の電話予約が必要 | 保険会社との示談がまとまらないとき |
| そんぽADRセンター (日本損害保険協会) | 損害保険や交通事故の相談、損害保険会社とのトラブルの苦情受付 | 保険会社の対応そのものに納得できないとき |
| 自分の保険会社 | 契約している補償や特約の確認 | 自分の保険で使える補償があるか知りたいとき |
整骨院の先生に、保険会社との交渉をお願いすることはできますか?
それはできません。保険会社との交渉や示談の代わりを務めることは、整骨院の役割ではないからです。私たちにできるのは、施術の記録をもとに、痛みの状態をどう確認してきたかを説明することまでです。示談や賠償額のことは、弁護士や上の表の相談窓口に相談してください。
そんぽADRセンターでは、自賠責保険のことも相談できますか?
日本損害保険協会の案内では、そんぽADRセンターの紛争解決の手続きは、自賠責保険の保険金の支払いなどに関するものは対象外で、別の機関である自賠責保険・共済紛争処理機構が担当するとされています。相談したい内容が自賠責保険の支払いに関わるものなら、まず保険会社や区の相談窓口でどこに相談すればよいか確かめると迷いにくくなります。
よくある質問
支払い終了の日付を過ぎてから受診した分は、全部自分の負担になりますか?
すぐに全額が自分の負担と決まるわけではありません。健康保険を使って受診し、自己負担した分をあとで自賠責保険に被害者請求する、といった方法が考えられます。ただし、対象として認められるかはけがの状態や医師の意見、書類の内容で変わります。終了日以降の扱いは、事前に保険会社に確認しておいてください。
自賠責保険への被害者請求には期限がありますか?
国土交通省によると、けがについての被害者請求は、事故発生の翌日から3年以内です。期限を過ぎると請求する権利がなくなるとされています。打ち切りのあとに請求を考えるときは、早めに準備を始めましょう。
通勤中の事故でも、健康保険で受診できますか?
自治体の国民健康保険の案内では、通勤中のけがで労災保険が適用される場合は、健康保険は使えないとされています。通勤中の事故だったときは、まず勤務先に労災保険の手続きを確認してください。どちらを使うかで手続きが違うので、受診する医療機関にも伝えておくと安心です。
医師が「もう通院しなくてよい」と言ったら、整骨院だけ続けることはできますか?
おすすめしません。医師が通院の終了を考えているのに整骨院だけ続けると、施術費が対象として認められない可能性があります。気になる症状が残っているなら、まずもう一度医師に相談してください。
打診の電話を受けたときは頭が真っ白になりましたが、まず医師に相談すればいいと分かって落ち着きました。
それがいちばん確実な進め方です。保険会社の打診は支払いの話、通院が必要かどうかは医師の判断、示談や賠償額は弁護士や相談窓口、と分けて考えれば、一つずつ片付けていけます。医師と相談して整骨院での施術を続けることになった場合は、痛みの状態を確認しながら施術を行います。
院の案内
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | らいと鍼灸・整骨院 |
| 柔道整復師 | 佐藤 亮 (さとう りょう) |
| 所在地 | 東京都江戸川区東小松川2-11-9 KYSビル1F |
| 電話 | 03-5879-6685 |
| 施術時間 | 午前 8時30分〜12時30分 / 午後 15時00分〜20時00分 (土曜は 8時30分〜14時30分) |
| 休み | 日曜・祝日・水曜午後 |
| 予約 | 予約制 |
| 駐車場 | なし (近隣にコインパーキングあり) |
※この記事は交通事故後の一般的な流れを説明するものです。症状の判断は医師に、保険の取り扱いは加入先の保険会社に、示談や賠償額は弁護士などの専門家にご確認ください。制度の内容は記事作成日時点のものです。



