高齢者が交通事故に遭ったら? 通院を支える家族ができることと順番
先生、今日は父のことで相談させてください。江戸川区で一人暮らしをしている70代の父が、スーパーの駐車場でバックしてきた車にぶつかってしまったんです。本人は「たいしたことない」と言っていますが、離れて暮らす私と兄はどう手伝えばいいのか分からなくて。家族は何から動けばいいのでしょうか?
心配でしたね。最初の順番は、年齢にかかわらず同じです。警察へ届け出て、医療機関で医師の診察を受け、保険会社へ連絡します。そのうえで、高齢の方の事故では、受診への付き添い、健康保険の届出、記録や書類の整理といった部分で家族の手助けが役に立ちます。今日はその分担の考え方をお話しします。
高齢の家族が事故に遭ったときの最初の順番
父は「相手も謝ってくれたし、警察を呼ぶほどじゃない」と言っています。それでも届け出は必要ですか?
はい、必要です。国土交通省は、交通事故にあった場合の警察への報告は義務で、特にケガを負った場合は「人身扱い」の届出が重要だと案内しています。日本損害保険協会も、事故の大きさにかかわらず必ず警察に連絡し、ケガをしている場合は被害者からも警察に説明することが大切だとしています。本人が遠慮しているときこそ、家族が届け出の大切さを伝えてあげてください。
その場では物損事故として扱われたかもしれない、とも言っていました。
日本損害保険協会は、はじめ物損事故扱いで手続きが済んでいても、治療が必要であれば医療機関を受診したうえで人身事故扱いに切り替えてもらうことが大切だと案内しています。流れは「物損事故から人身事故への切り替えはなぜ必要? 理由と手順の順番」にまとめていますので、届け出た警察署に相談してみてください。
| 順番 | 本人がすること | 家族が手伝えること |
|---|---|---|
| 1 | 警察へ届け出る | 届け出を迷っていたら必要性を伝える。人身扱いかどうかを確認する |
| 2 | 医療機関で医師の診察を受ける | 付き添って、事故の様子やふだんの様子を医師に伝える |
| 3 | 保険会社へ連絡する | 相手の保険会社の連絡先と担当者名を控える |
| 4 | 整骨院への通院は医師に相談してから | 医師の説明を一緒に聞き、保険会社への事前連絡を手伝う |
保険会社への連絡は、病院より先にしたほうがいいですか?
日本損害保険協会は、急いで医療機関にかかる必要のあるケガの場合は、医師への受診を優先し、落ち着いてから保険会社に連絡するよう案内しています。保険会社に伝える内容は「交通事故で保険会社に連絡するとき何を伝える? 聞かれることの一覧」も参考にしてください。
受診に付き添うときに家族ができること
父は痛みをがまんするところがあって、病院に行きたがりません。どう声をかければいいでしょうか?
日本損害保険協会は、事故の直後は大したケガでないと思っても、あとから症状が出たり重いケガが分かったりすることがあると案内しています。ケガがないと思っても、心配であればすぐに医療機関を受診するようすすめています。「家族が安心したいから一緒に行こう」と誘うと、受け入れてもらいやすいかもしれません。
受診が遅れると、手続きの面でも困ることがありますか?
あります。国土交通省は、事故後に速やかに受診しない場合、交通事故との因果関係 (事故が原因でけがをしたというつながり) が認められないことがあると注意をうながしています。日本損害保険協会も、受診が遅れると交通事故によるケガか判断できず、治療費などの賠償を受けられなくなるおそれがあるとしています。体のためにも手続きのためにも、早めの受診が大切です。
年齢のこともあるので、どんな症状なら急いだほうがいいのか知りたいです。
その判断は私からはお伝えできません。どの症状を急ぐべきか、どのくらいで回復するかは、医師が本人を診て判断することです。症状の出方や経過には個人差があります。気になる変化があれば、ためらわずに医療機関に相談してください。頭を打った可能性がある場合は「交通事故の頭痛やめまいが後から出たら? 最初に医療機関へ行く理由」もあわせて読んでみてください。
付き添ったとき、家族は何を伝えればいいでしょうか?
本人が言い忘れたり遠慮したりしやすいことを、家族が補ってあげると助かります。次の表のように、事前にメモにしておくと伝えやすくなります。ふだん飲んでいる薬やかかりつけの医療機関も、医師に伝えておくと安心です。
| 医師に伝えること | 例 |
|---|---|
| 事故の様子 | 駐車場でバックしてきた車に後ろから当たった、しりもちをついた |
| ぶつかった場所 | 腰と右ひじ。頭を打ったかは本人もはっきりしない |
| 事故の直後とその後の様子 | その場では歩けた。翌日から腰をかばって歩いている |
| ふだんの様子との違い | 食事の量、眠り方、外出の回数、家事のしかたが変わったか |
| ふだんの体のこと | 飲んでいる薬、通っている医療機関、持病として言われていること |
父は医師の説明を聞いても、あとで覚えていないことがあります。
それなら、家族が一緒に説明を聞いてメモを取るのがよいと思います。次の受診日、通院の目安、日常生活で気をつけることなど、医師から言われたことを書き残しておくと、離れて暮らす家族の間でも共有しやすくなります。
後期高齢者医療制度を使うときの届出
父は後期高齢者医療制度の資格確認書を持っています。交通事故のけがでも、ふだんどおり使えるのでしょうか?
使える場合がありますが、届出が必要です。2026年10月時点の江戸川区の案内では、交通事故など第三者から傷害を受けた場合でも、事前に連絡・届出をすることで後期高齢者医療制度で診療を受けられるとされています。そのうえで、警察への届出と同時に、区の高齢者医療係に必ず届け出るよう求めています。保険診療を受ける場合は最初に高齢者医療係へ連絡すれば、事故の詳細を聞いたうえで提出書類を渡してもらえる流れです。
治療費は、本来は相手が払うものですよね?
区の案内では、加害者が治療費を過失割合に応じて負担するのが原則とされています。そのうえで、後期高齢者医療制度で診療を受けた場合は、東京都後期高齢者医療広域連合が一時的に立て替え、あとで加害者に請求する仕組みです。江戸川区の窓口は高齢者医療係 (電話03-5662-1415) です。ほかの区市町村にお住まいの場合は、お住まいの自治体の窓口で確認してください。
届出は、家族が代わりにしてもいいのでしょうか?
江戸川区のページには、後期高齢者医療制度の手続き用に委任状 (本人が家族などに手続きを任せるための書類) の様式が掲載されています。ただ、第三者行為の届出を家族が代わりにできるか、どの書類が要るかは、私からは言い切れません。電話で高齢者医療係に確認してから動くと確実です。
記録と書類を家族で分担する
父は書類の整理が苦手で、領収書もどこかへ行ってしまいそうです。
記録と書類は、家族が手伝いやすい部分です。国土交通省は、記憶が鮮明なうちに現場の見取図や事故の経過、写真などの記録を残すことが重要で、記録は賠償交渉が終わるまで残しておけば安心だとしています。日本損害保険協会は、治療費を自分で払った場合は領収書を必ず保管するよう案内しています。保険会社に請求するには領収書の原本が必要だからです。
記録の書き方に決まった形はありますか?
国土交通省が作成した「交通事故被害者ノート」が使えます。被害者本人や家族が、事故の概要や被害の状況、病院や警察から受けた説明などを書き残せるメモ欄があり、警察や自治体などの支援の情報もまとめられています。国土交通省のページから電子版をダウンロードできるので、家族で同じノートを見ながら記録を分担すると、本人が同じ説明をくり返す負担も減らせます。
| 残しておくもの | 家族が手伝えること |
|---|---|
| 事故の記録 | 日時・場所・相手の連絡先・保険会社名を一緒に書き出す。写真があれば保存する |
| 医師の説明 | 受診のたびに、言われたことと次の受診日をメモする |
| 領収書 | 医療機関や薬局の領収書の原本を1冊のファイルにまとめる |
| 通院の交通手段と費用 | タクシーを使った日や、家族が車で送った日を記録する |
| 付き添った日 | 付き添った家族の名前と日付、仕事を休んだかどうかを書いておく |
家族が通院に付き添った分や、タクシー代はどうなるのでしょうか?
自賠責保険 (車を持つ人が必ず入る保険) の支払基準では、通院に要する交通費は「必要かつ妥当な実費」とされています。通院の付き添いについては、医師が看護の必要性を認めた場合に看護料の決まりがあります。実際に支払いの対象になるかは事故の状況や医師の判断、保険会社とのやり取りで変わります。記録と領収書を残したうえで、保険会社に確認してください。
整骨院への通院を考えるとき
父の家の近くに整骨院があって、そこなら一人でも通えると言っています。いきなり行っても大丈夫ですか?
まずは整形外科などの医療機関で医師の診察を受けてください。日本損害保険協会は、医療機関以外ではレントゲンなどの画像検査ができない場合があり、後遺障害に関する診断も受けられないため、整骨院などでのリハビリを希望する場合は医師と相談のうえ受診するのがよいとしています。整骨院では診断はできません。診断は医師が行います。
医師に相談したあとは、何をすればいいでしょうか?
整骨院に通い始める前に、保険会社にも伝えておきます。自賠責保険の支払基準では、柔道整復師などが行う施術費用は「必要かつ妥当な実費」とされていますが、対象になるかは事故の状況や医師の判断、保険会社とのやり取りで変わります。骨折や脱臼がある場合は、柔道整復師法第17条により、応急手当を除いて医師の同意がなければ施術できません。整形外科との通い方は「交通事故で整骨院と整形外科を併用する正しい順番と注意点」にまとめています。
通う回数は、多いほうが安心でしょうか?
通院は症状に応じて必要な分だけ、というのが基本です。どのくらいの間隔で通うかは、医師の説明と本人の体の状態をもとに決めていきます。施術を受ける場合も、痛みの状態を確認しながら進めていきますし、経過には個人差があります。家族は、通院が本人の負担になりすぎていないかを見てあげてください。
家族だけで抱えないための相談先
父は事故のあと、外出をこわがるようになって、買い物も億劫そうです。こういうことは誰に相談すればいいのでしょうか?
体の症状のことは、まず医師に相談してください。そのうえで、生活や介護の困りごとは、自治体の高齢者向けの相談窓口が使えます。江戸川区では、熟年相談室 (地域包括支援センター) が、高齢者の介護・健康・生活などの相談を受け付けています。受付の時間帯や場所は、区のホームページで確認できます。
相手の保険会社とのやり取りや示談が心配です。
日本損害保険協会は、示談が完了すると基本的に内容の変更や修正はできないため、納得できる内容かどうかを慎重に判断することが大切だとしています。示談の進め方や賠償額のことは、弁護士や日弁連交通事故相談センターなどの相談窓口に相談してください。保険会社から治療の終了について話があった場合は、「交通事故の治療費打ち切りを打診されたら? 考え方と相談先の順番」も参考になります。
警察にも相談できることはありますか?
国土交通省の案内によると、警察では警察署の交通課などに相談窓口を置き、被害者や家族への支援として、実況見分や病院への付き添い、各種相談の受理などを行っています。事故の手続きで分からないことがあれば、事故を扱った警察署に問い合わせてみてください。
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| 体の症状、通院の目安 | 受診している医療機関の医師 |
| 後期高齢者医療制度の届出 | お住まいの区市町村の担当窓口 (江戸川区は高齢者医療係) |
| 生活や介護の困りごと | 江戸川区の熟年相談室 (地域包括支援センター) |
| 保険の取り扱い | 相手の保険会社、家族が加入している保険会社 |
| 示談や賠償額 | 弁護士、日弁連交通事故相談センターなど |
| 事故の手続き | 事故を扱った警察署 |
よくある質問
高齢の家族が「痛くない」と言っていても、受診したほうがいいですか?
はい、早めに医療機関で医師の診察を受けてください。日本損害保険協会は、事故の直後は大したケガでないと思っても、あとから症状が出たり重いケガが分かったりすることがあると案内しています。受診のときは、家族が事故の様子とふだんの様子を医師に伝えてあげてください。
交通事故のけがでも、後期高齢者医療制度は使えますか?
江戸川区の案内では、事前に連絡・届出をすれば後期高齢者医療制度で診療を受けられるとされています。警察への届出と同時に区の高齢者医療係に届け出てください。示談を先に済ませると制度で受診できなくなる場合があるので注意が必要です。
家族が通院に付き添った分は、保険で支払われますか?
自賠責保険の支払基準では、医師が看護の必要性を認めた場合に通院の付き添いの看護料の決まりがあります。対象になるかは事故の状況などで変わるので、付き添った日を記録したうえで保険会社に確認してください。
高齢の家族を整骨院に連れて行く前に、何をしておけばいいですか?
まず医療機関で医師の診察を受け、整骨院への通院について医師に相談してください。保険会社にも事前に伝えておきます。骨折や脱臼がある場合は、応急手当を除いて医師の同意が必要です。
院の案内
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | らいと鍼灸・整骨院 |
| 柔道整復師 | 佐藤 亮 (さとう りょう) |
| 所在地 | 東京都江戸川区東小松川2-11-9 KYSビル1F |
| 電話 | 03-5879-6685 |
| 施術時間 | 午前 8時30分〜12時30分 / 午後 15時00分〜20時00分 (土曜は 8時30分〜14時30分) |
| 休み | 日曜・祝日・水曜午後 |
| 予約 | 予約制 |
| 駐車場 | なし (近隣にコインパーキングあり) |
※この記事は交通事故後の一般的な流れを説明するものです。症状の判断は医師に、保険の取り扱いは加入先の保険会社に、示談や賠償額は弁護士などの専門家にご確認ください。制度の内容は記事作成日時点のものです。



