むちうちの後遺障害と等級とは? 認定の基本と医師の診断が前提になる理由

ユイ

先生、追突事故のむちうちで整形外科に通っているのですが、首の痛みがまだ残っています。ネットで「後遺障害」「等級」という言葉をよく見かけるのですが、私も何か手続きをしたほうがいいのでしょうか?

院長 佐藤

症状が続いていると、この先どうなるのか不安になりますよね。後遺障害や等級は聞き慣れない言葉ですが、仕組みの基本を知っておくと、だれに何を確認すればいいかが見えてきます。今日は、後遺障害とはどういうものか、等級はだれがどう決めるのか、その前提として医師の診断がなぜ欠かせないのかを、順番に見ていきましょう。

ユイ

整骨院の先生に聞いてもいい話なのですか?

院長 佐藤

制度の仕組みや一般的な手続きの流れなら、公的な資料をもとにお話しできます。ただ、後遺障害が残っているか、症状固定かどうかを判断するのは医師で、私たち柔道整復師ではありません。等級を決めるのも整骨院ではありませんし、示談や賠償額は弁護士などの領域です。その役割の違いも含めて説明しますね。

後遺障害とはどういうものか

ユイ

そもそも「後遺障害」と、よく聞く「むちうち」はどう違うのですか?

院長 佐藤

「むちうち」は首のけがの一般的な呼び方で、どんな診断名がつくかは医師が診察や検査をして判断します。むちうちの症状が出る時期や受診の目安は 「交通事故のむちうち症状はいつから? 後から痛むときの受診タイミング」 で説明しています。一方の後遺障害は、けがの名前ではなく、自賠責保険 (車を持つ人が必ず入る保険) などの手続きで使われる言葉です。

ユイ

自賠責保険では、後遺障害をどう説明しているのですか?

院長 佐藤

国土交通省は、後遺障害を「自動車事故により受傷した傷害が治ったときに、身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態」と説明しています。そのうえで、事故のけがとの間に相当因果関係があり、その存在が医学的に認められる症状で、具体的には自動車損害賠償保障法施行令の別表第一または第二に当てはまるものが対象だとしています。症状が残っていることに加えて、事故との関係や医学的に認められることが条件になっている点が大切です。

ユイ

首の痛みが残っていれば、それで後遺障害になるわけではないのですね。

院長 佐藤

そうです。後遺障害にあたるかどうかは、決められた手続きを経て判断されます。症状や経過には個人差があり、同じような追突事故でも、症状が落ち着く人もいれば残る人もいます。ほかの人の話と比べるより、まずはご自身の状態を医師に診てもらうことが出発点です。

後遺障害の等級とは

ユイ

「等級」というのは何ですか?

院長 佐藤

後遺障害の程度に応じて、政令の等級表で第1級から第14級までが定められています。国土交通省によると、自賠責保険の後遺障害の限度額 (支払われる上限) は等級ごとに決まっていて、介護を要するもの以外では第1級の3,000万円から第14級の75万円までです。逸失利益 (後遺障害のために将来得られなくなる収入) も、等級に応じた労働能力喪失率をもとに計算されると説明されています。

ユイ

むちうちだと何級になるのですか?

院長 佐藤

「むちうちだから何級」という決まりは、今回確認した公的な資料にはありませんでした。ただ、国土交通省が載せている等級表には、体の一部に残る神経の症状について書かれた項目が2つあります。第12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」と、第14級の「局部に神経症状を残すもの」です。

等級表の項目 (国土交通省の等級表より) 自賠責保険の限度額 補足
第12級 「局部に頑固な神経症状を残すもの」 224万円 第12級にはほかの項目もある
第14級 「局部に神経症状を残すもの」 75万円 第14級にはほかの項目もある
ユイ

この2つは、どう区別されるのですか?

院長 佐藤

2つの項目の違いをどのような基準で判断するのか、その具体的な中身は、今回確認した公的な資料では詳しく確かめられませんでした。また、むちうちの症状がこのどちらかに当てはまるのか、どれにも当てはまらないのかは、医学的な資料をもとにした調査で決まるもので、事前に決まっているものではありません。気になる場合は、医師や保険会社、弁護士、公的な相談窓口に確認してください。

等級はだれがどう決めるのか

ユイ

等級は、だれが決めるのですか?

院長 佐藤

国土交通省の説明をもとにすると、請求書類は保険会社から損害保険料率算出機構 (自賠責保険の損害調査を行う団体) の調査事務所に送られます。調査事務所は、事故の状況や、けがと事故の因果関係、損害額などを公正かつ中立の立場で調査し、その結果を保険会社に報告します。そのうえで保険会社が支払額を決める、という流れです。

ユイ

どんな基準で判断されるのでしょうか?

院長 佐藤

自賠責保険の支払基準では、等級の認定は原則として労災保険の障害の等級認定の基準に準じて行うとされています。また、日本損害保険協会によると、保険金が支払われた時点で、後遺障害の等級とその判断理由が保険会社から書面で提供されます。どう判断されたかは、その書面で確認できるということです。

順番 やること 関わる人・機関
1 症状が残っているか、症状固定かを判断する 医師
2 後遺障害診断書を書いてもらう 治療を受けた医師または病院
3 必要に応じてレントゲン・CT・MRIなどの画像をそろえる 治療を受けた医師または病院
4 自賠責保険の保険会社に請求書類を出す 請求者 (被害者が直接請求する方法もある)
5 事故の状況、因果関係、損害額などを調査する 損害保険料率算出機構の調査事務所
6 支払額を決め、等級と判断理由を書面で知らせる 自賠責保険の保険会社
ユイ

自分で請求する場合、期限はありますか?

院長 佐藤

国土交通省によると、被害者が後遺障害の分を自賠責保険に直接請求する場合は、症状固定日の翌日から3年以内です。請求が遅れる事情があるときは時効更新の制度があるので、保険会社に相談するよう案内されています。症状固定の意味や判断の流れは 「交通事故の症状固定とは? 意味と判断する人、その後の流れ」 にまとめています。

認定の前提は医師の診断

ユイ

先生のお話を聞いていると、何度も「医師」が出てきますね。

院長 佐藤

そこがいちばん大切なところです。国土交通省のよくある質問では、後遺障害による損害は、医師の後遺障害診断書にもとづき一定の手続きのもとで後遺障害として認定された場合に、等級に応じた金額が支払われると説明されています。また、症状固定は医師が判断するものとされ、後遺障害診断書の取付け先は「治療を受けた医師または病院」です。

ユイ

つまり、医療機関に通っていないと手続きの土台がないということですか?

院長 佐藤

そういうことです。だからこそ、事故のあとは整骨院より先に、整形外科などの医療機関で医師の診察を受けることが欠かせません。後遺障害診断書は治療を受けた医師または病院に書いてもらうものなので、事故のあと医療機関で診てもらっていることが手続きの前提になります。

ユイ

医師には、どんなふうに症状を伝えればいいのでしょうか?

院長 佐藤

今残っている症状、仕事や家事、日常生活で困っていること、症状の出方の変化を、大げさにも控えめにもせず、ありのまま伝えることです。いつから、どんなときに、どのあたりが痛むのかを、日付つきで簡単にメモしておくと伝えやすくなります。どの検査が必要か、書類に何を書くかは医師が判断することなので、気になることは遠慮せず医師に質問してください。

整骨院ができること・できないこと

ユイ

今、整形外科と並行して整骨院にも通っています。後遺障害のことで整骨院にお願いできることはありますか?

院長 佐藤

正直にお伝えすると、後遺障害については、整骨院でお手伝いできることは限られています。柔道整復師は、後遺障害が残っているか、症状固定かどうかを判断する立場になく、後遺障害診断書を書くこともできません。等級について見通しをお伝えしたり、手続きの進め方を助言したりすることもできません。

ユイ

では、整骨院ではどんなことをしてもらえるのですか?

院長 佐藤

後遺障害の手続きそのものに整骨院が関わることはありません。整骨院でしているのは、施術のときに確認した体の状態や、ユイさんから聞いたつらさを記録しておくことと、気になる症状の変化があれば早めに医師に伝えていただくようお声がけすることです。整形外科と整骨院の通い方の基本は 「交通事故で整骨院と整形外科を併用する正しい順番と注意点」 にまとめています。

内容 判断・対応するのは
症状が残っているか、症状固定か 医師
後遺障害診断書の作成、画像検査 治療を受けた医師または病院
事故との因果関係や損害の調査 損害保険料率算出機構の調査事務所
支払額の決定、等級と判断理由の通知 自賠責保険の保険会社
示談や賠償額の考え方 弁護士、公的な相談窓口
施術時の体の状態の記録、医師への相談のおすすめ 整骨院

結果に納得できないときと相談先

ユイ

もし等級の結果に納得できなかったら、どうすればいいのですか?

院長 佐藤

国土交通省のよくある質問では、後遺障害の等級認定に不服がある場合は、新たな立証資料を添えて保険会社に異議申立をするか、一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構に調停を申請できると案内されています。この機構では、弁護士、医師、学識経験者で構成する紛争処理委員が調停を行います。日本損害保険協会が案内している電話はフリーダイヤル 0120-159-700 です。

ユイ

新たな立証資料というのは、どんなものを用意すればいいのですか?

院長 佐藤

何が必要になるかは、等級の判断理由や症状によって違います。まず保険会社から届く書面で判断理由を確認し、医師に相談したうえで、手続きの進め方は弁護士や公的な相談窓口に確認してください。

ユイ

江戸川区に住んでいる場合、区の相談窓口もありますか?

院長 佐藤

江戸川区では、法律や判例などに基づく交通事故の相談を行っています。交通事故相談員 (元警察官) が対応し、2026年10月時点の区のページでは月曜日から木曜日の面談のほか、Zoom によるオンライン相談も案内されています。予約は施設管理課交通安全推進係 (03-5662-1998) です。具体的な示談金額や賠償の交渉は弁護士の領域なので、必要に応じて弁護士への相談も考えてください。

困りごと 相談先の例
症状が残っているか、どんな検査が必要か 通っている医療機関の医師
請求の手続き、書類、期限 自賠責保険の保険会社
等級の結果に納得できない 保険会社への異議申立、自賠責保険・共済紛争処理機構
示談や賠償額の考え方 弁護士、江戸川区の交通事故相談

よくある質問

ユイ

むちうちになったら、必ず後遺障害の手続きをしなければいけないのですか?

院長 佐藤

いいえ。後遺障害の手続きは、症状が残ったときに医師の判断を受けて進めるもので、すべての人に必要なものではありません。症状や経過には個人差があるので、まずは医師に今の状態をどう見ているかを聞き、手続きをするかどうかは保険会社や弁護士に相談して決めるとよいでしょう。

ユイ

後遺障害診断書は、整骨院で書いてもらえますか?

院長 佐藤

書けません。国土交通省の案内では、後遺障害診断書の取付け先は治療を受けた医師または病院です。事故のあとに医療機関を受診していないと医師の判断を受けにくくなるので、必ず医療機関で医師の診察を受けてください。

ユイ

等級が決まったあとに症状が重くなったら、どうなりますか?

院長 佐藤

国土交通省のよくある質問では、後遺障害が悪化して、すでに認定された等級より重いものになった場合、診断書やレントゲン写真など医学的な立証資料を添えて保険会社に申請できると案内されています。症状の変化を感じたら、まず医師の診察を受けてください。

ユイ

症状固定のあとの治療費は、自賠責保険から出るのですか?

院長 佐藤

国土交通省のよくある質問では、自賠責保険では症状固定のあとの治療費は認定されないと説明されています。これは自賠責保険についての説明で、ほかの保険の契約内容や相手方との話し合いでの扱いは事故ごとに違う可能性があります。自己判断せず、保険会社に確認し、必要なら弁護士や公的な相談窓口に相談してください。

ユイ

後遺障害や等級は、整骨院や自分で決められるものではなく、医師の診断をもとに決められた手続きで判断されるのですね。まずは整形外科の先生に、今の首の状態をどう見ているか聞いてみます。

院長 佐藤

それがいちばんの近道です。症状のメモや保険会社とのやり取りは記録しておき、手続きや示談で迷ったら、保険会社や公的な相談窓口、弁護士に確認してください。当院でも、施術中に気になる症状の変化があれば、早めに医師へ伝えていただくようお声がけしています。

院の案内

項目 内容
名称 らいと鍼灸・整骨院
柔道整復師 佐藤 亮 (さとう りょう)
所在地 東京都江戸川区東小松川2-11-9 KYSビル1F
電話 03-5879-6685
施術時間 午前 8時30分〜12時30分 / 午後 15時00分〜20時00分 (土曜は 8時30分〜14時30分)
休み 日曜・祝日・水曜午後
予約 予約制
駐車場 なし (近隣にコインパーキングあり)

※この記事は交通事故後の一般的な流れを説明するものです。症状の判断は医師に、保険の取り扱いは加入先の保険会社に、示談や賠償額は弁護士などの専門家にご確認ください。制度の内容は記事作成日時点のものです。